今回は混声合唱とピアノのための「やわらかいいのち」より「Ⅴ」の歌詞の意味を考察していきます!
是非最後まで見ていってください!
はじめに
混声合唱とピアノのための「やわらかいいのち」は
谷川俊太郎の詩集『魂のいちばんおいしいところ』に所収された5編の詩からなる混声合唱組曲です。
本記事ではその組曲の5曲目の詩の内容を考察していきます。
詳しい曲概要はこちら→混声合唱とピアノのための「やわらかいいのち」 (松下耕)を紹介! 合唱曲解説 | 合唱曲紹介屋tam
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■ 詩の全体像
この詩は一貫して
「あなたは愛されることから逃れられない」
という断定から始まり、最後まで一度も揺らぎません。
普通「愛される」という言葉は
・誰かに好かれる
・大切に思われる
という“人間関係の感情”として使われます。
しかしこの詩は違います。
ここで語られている愛は
評価でも好意でもなく、“いのちが持つ性質”
として描かれています。
また「逃れられない」という表現も特徴です。
どれだけ人が愛することから逃れようと塞ぎ込んだとしても、
それでも愛されるという表現です。
■ 冒頭部分――「逃れられない愛」
あなたは愛される
愛されることから逃れられない
「愛される可能性がある」ではなく
「愛されることは確定事項」 と言い切っています。
しかも次に続くのが
たとえあなたがすべての人を憎むとしても
たとえあなたが人生を憎むとしても
つまりこの詩は、
-
性格が良いか悪いか
-
人を愛せるかどうか
-
前向きか後ろ向きか
一切関係ないと言っています。
特に思春期の少年少女にとっては、自分の存在そのものに疑問を持ったり、愛されているのか不安を感じたりすることも多くあります。
ここで否定されているのは、
「愛されるには条件がいる」という私たちの思い込みです。
■ 「誰に愛されるのか?」のズレ
普通なら
「家族に」「友達に」「恋人に」
と続きそうなのに、この詩は違う。
あなたは降りしきる雨に愛される
微風にゆれる野花に
えたいの知れぬ恐ろしい夢に
柱のかげのあなたの知らない誰かに愛される
ここで愛する主体が
-
自然
-
無意識(夢)
-
見知らぬ存在
に広がっています。
しかも「えたいの知れぬ恐ろしい夢」って否定的な言葉ですよね。
それにさえ愛される、と言う世界観。
しかし谷川俊太郎が言いたいのは、そういうものに愛されるということだけではなく、
そうした存在にさえ愛されるのなら、身近な人間(家族や友人)に愛されないはずがない、
という極端な例を示しているのではないかと私は感じます。
■ なぜ愛されるのか ―― 理由は「いのち」
後半は理由の説明に入ります。
なぜならあなたはひとつのいのち
愛される理由は
・優しさ
・努力
・成果
ではなく、
ただ“いのちであること”
だけ。
■ 「否定しても止まらないもの」
どんなに否定しようと思っても
生きようともがきつづけるひとつのいのち
人は
「もうどうでもいい」
「消えてしまいたい」
と思うことがあっても、
心臓は勝手に動き、
呼吸は続き、
体は生きようとする。
この詩はそれを
“いのちの意志”
として見ています。
■ 最後の比喩 ―― 硬い世界とやわらかいいのち
すべての硬く冷たいものの中で
なおにじみなおあふれなお流れやまぬ
やわらかいいのちだからだ
ここは詩のクライマックス。
世界は冷たく、厳しく、無機質に見える。
でもその中で、
にじむ
あふれる
流れやまぬ
と表現される「いのち」は、
止まらない水のような存在。
硬いもの(社会・現実・絶望)を前にしても、
いのちは消えず、染み込み、続いていく。
だから愛される。
強いからではなく、やわらかいから。
■ この詩が伝えていること
この詩は「元気を出そう」とは言っていません。
「前向きになれ」とも言っていません。
ただ、こう言っています。
あなたがどう思おうと、
あなたはすでに世界の中で受け入れられている存在である
愛は“獲得するもの”ではなく、
存在しているだけで発生しているもの。
それを教えてくれる詩です。
■ まとめ
この詩のメッセージは一言でいうと
愛は感情ではなく、いのちの構造そのもの
ということ。
だから孤独でも、自分を否定しても
愛からは逃げられない。
それは呪いではなく、
いのちが持つ圧倒的な祝福として描かれています。
とても重く、それでいて優しい詩です。
ぜひ詩をかみしめながら歌ってみてください。


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