今回は混声合唱曲「Gifts」の歌詞を考察していきます!
是非最後まで見ていってください!
「Gifts」の曲概要はこちら→「Gifts」(大田桜子)を紹介! 合唱曲解説 | 合唱曲紹介屋tam
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はじめに
この詩は、「足りなさ」や「自信のなさ」といった弱さを出発点にしながら、それでも人は確かに光を持っているのだと語りかけます。
その象徴として置かれるのが、満ち欠けの途中にある下弦の月です。完全ではない姿でなお輝く月に重ねて、ひとりひとりの存在価値が静かに肯定されていきます。
本稿では、月の比喩と反復される呼びかけに注目しながら、この詩のメッセージを読み解いていきます。
① 下弦の月という象徴
詩の冒頭で示される下弦の月は、満月のような完成形ではありません。欠け、途中にある存在です。それでもなお「輝く」ものとして描かれます。
ここで月は、「完璧でなくても美しい」「欠けていても光れる」という価値観の象徴となっています。語りかけられる「あなた」もまた、同じように気づかれていない光を宿している存在です。
② 無いものねだりと自己否定
詩の前半では、他人と比べてしまう心、自信の欠如、いじけてしまう感情が率直に語られます。「あの子になりたい」という思いは、多くの人が抱えたことのある感情です。
この部分で詩は、前向きな言葉を急ぎません。まず弱さをそのまま認めることで、後の肯定に無理が生じない構造になっています。
③ 「あるから」という肯定の論理
中盤から繰り返されるのが、「〜があるから」という言葉です。名前がある、親がいる、愛がある。ここで挙げられるのは、特別な才能ではなく、生まれたことそのものに結びついた事実です。
存在の根拠は、成果や評価ではなく、「ここに生まれてきた」という一点にある。その認識が、語り手の視線を支えています。
④ 痛みが生むやさしさ
「辛く、悲しい、痛みがあるから/やさしくあれる」という一節は、この詩の核心のひとつです。痛みは否定されるべきものではなく、他者を癒す光へと変わりうるものとして描かれます。
下弦の月の光が強すぎないからこそ、夜に寄り添えるように、人の弱さもまた、誰かの支えになるのです。
⑤ 孤独を前提とした共感
人混みの帰り道で描かれるのは、「みんなバラバラ」である現実です。同じ人はいない、孤独でも仕方ない。その認識は、突き放しではなく、現実を引き受けたうえでの共感です。
だからこそ、歌や本、映画といった「心を導くもの」が必要とされます。孤独を消すのではなく、孤独と共に歩くための灯りとして、それらは存在します。
⑥ 時間の循環と未来への視線
春夏秋冬が巡るように、今の感情も固定されたものではありません。過去があり、今があり、未来があるという当たり前の事実が、最後に大きな支えとして提示されます。
行きたい場所、食べたいもの、笑いたい瞬間。そうした小さな欲望が、「生きていく意味」として肯定されていきます。
おわりに
この詩が願うのは、何者かになることではありません。「あなたがあなたでありますように」という言葉に、そのすべてが集約されています。
欠けていてもいい。
迷っていてもいい。
下弦の月が静かに夜を照らすように、あなたもまた、あなた自身の形で輝いている。
この詩は、その事実にそっと気づかせる、やさしい祈りの歌なのです。


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